これ僕.com:行動分析学マニアがおくる行動戦略

意図と行動のギャップから生じる「不自由さ」への挑戦。果たして僕たちに自由はあるのか?

ユーザー中心ウェブサイト戦略

ユーザ中心ウェブサイト戦略 仮説検証アプローチによるユーザビリティサイエンスの実践

ユーザ中心ウェブサイト戦略 仮説検証アプローチによるユーザビリティサイエンスの実践

  • 作者: 株式会社ビービット武井由紀子,遠藤直紀
  • 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
  • 発売日: 2006/09/27
  • メディア: 単行本
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これは良い本だ。ウェブサイト構築の話だけど、業務システムにも使えるところがいっぱい。何より素晴らしいのが、ビジネス側とユーザー側のWin-Winがプロセスの中に組み込まれている点。ともすれば、理想のユーザー像を勝手に作り上げてしまい、ビジネス側の都合だけが前面で出たサイト設計になりがちだ。しかし、ユーザー中心の仮説・検証プロセスによって、ビジネス側が提供できる価値をニーズのあるユーザーに届けようという意識の元、サイト設計を進めることができる。これは我々が普段携わっている業務システム構築にも、多いに活用できる考え方だと思う。我々が目指すべきも我々とユーザーのWin-Winなのだから。
ちなみに、これはもっと上のレベル(経営より?)で捉えると、マーケティングの話でもありますね。たぶん。

簡単なまとめ

  • 仮説・検証を繰り返すことで、目的のサイトデザインへの到達を目指す
  • 目的のサイトデザインとは、ビジネス側の価値とユーザー側の価値が交わる、いわゆるwin-winを達成できるサイト
  • 戦略から実際のサイト作りまで、ユーザーを中心に据えたユーザー中心設計である
    • 仮説として、「ユーザーの行動シナリオ」を定義
    • 検証として、「ユーザビリティテスト」でユーザーの行動を分析
    • 要件定義、基本導線設計、詳細設計の全てが「行動シナリオ」をベースに作られる
  • リリース後もユーザーの行動を分析し、想定した通りにサイトが利用されているかチェック

行動シナリオによるウェブサイト戦略の立案

仮説は「ユーザーの行動シナリオ」という形に記述される。この行動シナリオがサイトの戦略そのものだ。行動シナリオは下記のように策定する。

  1. サイトのゴールを明確にする
    • ユーザーニーズの存在有無
    • 経営戦略や事業戦略から見たときのサイトの目的(縦の視点)
    • パンフレットや人による営業といった、他業務との繋がりを考えた場合のサイトの目的(横の視点)
  2. ビジネス視点とユーザー視点の擦り合わせ
    • サイトで実現したいこと(ビジネス視点)
    • ユーザーがサイトに求めること(ユーザー視点)
  3. サイト上のゴールにユーザーを誘導するシナリオ(戦略)を考える
    1. ユーザーの認知ステップや行動ステップを書き出す
    2. クリティカルパスを明確にする
      • ユーザーが絶対に必要としているニーズと、妥協できるニーズを見極める
    3. サイトのゴールへ到達してもらう戦術を考案する
      • 心理的障壁となりそうな部分をクリアしてもらう考慮など

ウェブサイトのデザイン(設計)をするまえに、ユーザーの行動をデザインするわけだ。これについては、単純な顧客接点のみを考えて作るのではなく、各状況に置ける様々な心理的変化にまで踏み込んでいく。例えば、ショッピングサイトなどでは、購入が終わった直後というのは、ユーザーもほっと気がゆるみ、目的以外のものへ目を向ける余裕が生まれる。そこで提示する情報によっては、更に売上を上げるチャンスになるかもしれない。このように、ユーザーの行動を時系列で捉えたり、ユーザーの視点を考えることで、その心理的な変化を考慮に入れたりすることも重要なのだ。これをユーザー中心設計という。
行動シナリオが策定された段階では、これは「仮説」なので、検証が必要になる。ここでは画面プロトタイプを用いたユーザビリティテストを行う。画面プロトタイプといっても、トップ画面と最も重要な画面をラフに作成したものだ。多くの画面を精緻に作っても、この段階では大幅な修正が入るので、無駄な労力をかけることになる。ユーザーの反応を引き出すのが目的なので、ラフスケッチレベルで十分と言える。プロトタイプにトップ画面が入るのは、トップ画面がサイト全体を表すページであり、ユーザーがコンテンツへの興味を示すか、サイト全体の概要を理解できるかといった点を検証するのに適しているからである。ユーザビリティテストで引き出したユーザーの反応は、当然、行動シナリオへ反映させ、精緻化する。

サイト戦略を土台にウェブサイトをデザインする

行動シナリオが策定されたら、今度はそれを元にウェブサイトのデザインを作り上げていく。やるべき事を挙げると、次のようになる。

  1. 要件定義
  2. サイトの基本導線設計と検証
  3. サイトの詳細画面設計と検証
  4. リリース後の効果検証
要件定義

要件定義書には行動シナリオに沿って、下記のことを書いておく。

  • シナリオ上に現れるユーザーニーズや想定されるアクション
    • 例: 不動産物件を選択する際に、「特定の駅から徒歩○○分」という条件を指定したい
  • ユーザーニーズを満たすためのコンテンツ名や機能名
  • ユーザーニーズに対する重要度

要件定義書を記述する目的は、次の通り。

  • サイトの方向性やゴールをメンバー間で共有する
  • 作業全体を把握し、工数見積ができるようにする
  • 考えを整理し、要件の抜けや漏れを防止する
  • 要件への対応状況を一元管理する
    • 重要度の低いニーズは後回しにする、等
基本導線設計

基本導線というのは、行動シナリオに沿ってユーザーが実際に画面を操作した際の画面展開。シナリオがこうなってるから、この画面をこういう順番に繋げれば、ユーザーをゴールに誘導できるね!って感じで設計する・・・と思う。ちなみに、この基本導線上に挙がってくる画面が、そのサイトの主要画面ということになる。この段階での設計のポイントは次の通り。

  • 似たような要件を一つの画面に纏めない
    • 要件の論理構造とユーザーの動きは一致しない
    • 似たような機能だからと、同じ画面に纏めてしまうと、ユーザーを誘導するサイトデザインができない
  • 行動シナリオが一通り追えるレベルでOKとする
    • 画面を細かく作り込む必要はない
    • 想定しているシナリオが機能するか検証できればいいので、全体の流れをラフに作る
  • ナビゲーションやサイト構造から検討しない
    • サイトマップやナビゲーションを考えてから主要画面のデザインに入ると、シナリオ流れが考慮されていない構造になる(論理構造はユーザーの行動と一致しない)
    • 主要画面を幾つか作り、ユーザーがシナリオに沿って行き来する可能性を考え、次第にナビゲーションを作り上げていく
  • 設計メモをプロトタイプの余白部分に残す
詳細画面設計

詳細設計時のポイントは、シナリオや文脈を重視することだ。細部に集中するとシナリオを忘れがちになり、ユーザーの行動を阻害する画面デザインになってしまうことがある。時々、画面を最初から使用する「ウォークスルー」をやってみた方が良い。
また、「斜め読み」をサポートするのも重要だ。ウェブユーザーは、驚くほど文章を読まない。紙の媒体よりも可読性が低いことが原因らしい。だから、冗長な表現や形容詞等をなるべく避けることで文章量を減らしたり、箇条書きや見出し、図を有効に活用し、一目で内容が理解できるようにする。

リリース後の効果検証

サイトデザインが期待通りの効果を発揮しているか判断するために、下記のように検証項目を明確にしておく。

  1. サイトの目的は何なのか問う
  2. サイト目的達成要因を検討する
    • それが達成されている状態は、どういう状態なのか?
  3. "2"を測定・把握するための項目を洗い出す
    • 分類
      • 集客・販促・誘導・展開・その他
    • 目的達成要因
    • 検証項目
    • 理由
    • 検証方法

検証方法としては、下記の手段が挙げられる。

  • アクセスログの解析
  • ビジネス側で把握できる各種数値
  • アンケート