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論理というものを論理的に説明してくれている本かと。
データ・ワラント・クレーム
論理の基本構成を
- データ
- ワラント
- クレーム
とした上で、それらを崩す時のポイント(つまり検証ポイントとなる)も示してくれている。
データ・ワラント・クレームという言葉は初めて聞いた。どうも欧米のディベートで使用される言葉らしい。本文中の説明を引用してみると、以下のようになっている。
「データ」とは(中略)「主張する内容を裏付ける事実」を指します。
「ワラント」という概念は日本人には分かりづらいかもしれません。辞書を引けば「根拠、保証」といった意味が載っています。ディベート用語では「提示したデータがなぜ主張する内容を裏付けることになっているのかという論拠」をいいます。ワラントのない、無関係のデータを引っ張り出してきて「これが証拠です」と言っても意味がないわけですし、じつは一見無関係なように見えても意外なワラントによってしっかりとした根拠があったという場合もあります。
「クレーム」とは「主張」のことです。
ワラントが一番分かりづらいと思ったので、長めに引用してみた。私の知識の中で、このデータ・ワラント・クレームに近いものがあって、それは勝間和代さんの空・雨・傘のフレームワークだ。
# 空は「事実」:空を見上げたら、曇ってきていた
# 雨は「解釈」:曇ってきたので、雨が降りそうだと思った
# 傘は「行動」:雨が降りそうなので、傘を持っていく
空=事実=データだし、傘=結論や主張=クレームだ。そして、雨は「解釈」だけど、事実と結論を適切に結びつけるための根幹になる部分であり、これはワラントに該当するものと思われる。
本書の著者は、日本人の典型的パターンを、データもワラントもないままクレームのみがある、としている。これは確かにその通りだと思う*1。加えて、頻出するパターンは、ワラントを自明の事実であるかのように扱って、クレームを補強するケースもあるのではなかろうか。
如何にも論理的で説得力のある意見だけど、どうも納得がいかない。そんな場合には、データ・ワラント・クレームでも空・雨・傘でもいいので、相手の意見をロジカルに分解してみるといいように思う。大抵は、どこかに抜けがある。
ケースサイドとプランサイド
ある論題に対して、行動を取るべきであると判断されるために必要な2つ。
- ケースサイド=必要性=問題を見つけること
- プランサイド=有効性=問題を解決すること
本書では郵政民営化を例にあげていた。まず、郵政民営化の議論自体がワラントのない主張であったとしている。そこにはワラント、具体的にはケースサイドとプランサイドが必要だ。つまり、当時の小泉首相は、
を討論、説明しなければならなかったのだとか。
論理的であることの落とし穴
論理的であることのデメリットというか、知っておかなければならないこともある。引用しておきたい。
物事には価値を相対化していいものと相対化しえはいけないものとがあります。
(中略)
たとえば、「人の命」は相対化してはいけないものです。
(中略)
もっと極端に言えば、「人を殺してはいけない理由」が存在するのと同時に「人を殺してもいい理由」が存在してしまうことになります。
自分の頭で考え、自由になるためには、論理で考えていてはダメです。論理の世界は過去の最適化の世界に過ぎません。つまり、過去(「現状」=StatusQuo)のなかに閉じこめられてしまうのです。
というわけで、論理的とはどういうことか、それを知るには良い本かもしれない。ただ、個人的な難点を言えば、後半からディベートの説明や例に入っていくのだが、専門用語が多すぎて読むのが辛かった。それらの用語の説明は事前にされているのだが、とは言えそんなに覚えられるものではないので。
そこだけ我慢できれば、良い本。
本書から得た信念と質問
信念
「論理」を徹底的に極めたその先に、論理を越えた聴論理がある。そして、論理を極めるために最適なのが、欧米式のディベートである。
フォーカスを変えるための質問
- 今、正しい判断を鈍らせている「情動」は何か?
- これは相対化して捉えて良い価値観か?(=論理的に考えて良いものか?)
- この意見のデータ・ワラント・クレームは何か?
*1:という私のこの意見も、そのパターンに嵌っているがw